「松美…大丈夫?」
凛が彼方の顔を伺う。
俺と凛の間に、松美を載せている。
「うん、ありがとう」
少し震えている。
怖かったのだろう。
「大丈夫、もうこない」
俺は彼方の肩に手を置いて、
少し迷ったが、手を握った。
凛も握った。
彼方は落ち着いたようだった。
「田中絵梨子って、何か心当たりあるか?」
「全然。話したこともないよ。
でも、授業中によく目があうっていうか。」
「そりゃ誰でもお前の方見ちゃうと思うけど?あんなことしてたら」
「ご…ごめん」
「別に良いけどさー、やばくない?佐々木涼太って怖いファンとかいるじゃん。」
凛が言った。
「うん、私もよくわかんないんだけど…佐々木君がね…私、どうやって断れば良いのか…」
松美は顔が赤い。
恥ずかしいのだろうか。
俺もこんな話は恥ずかしい。
「普通にやめてって言えば良いんじゃねーの?」
凛は面倒くさそうに言った。
「そうだよね。うん。そうする」
松美は引っ込み思案な性格を直す必要がある。
今までキスされていたのも、そんな性格のせいだろう。
「つか、佐々木涼太ってなんなの?
付き合ってもないのに〜」
凛は意味不明って感じ、と呟いて窓の外を見た。
松美も意味不明って感じ、というように俯いた。
俺は…ムカつくって感じ。と呟いた。



