失恋、



「佐々木君?」

目が覚めた。

眠ってしまっていたようだ。
昼休み、残り15分ほど。

俺を起こしたのは、この前少し揉めた
、松美彼方の悪口を言っていた女子。

「えっと…」


「田中絵梨子。前はごめんね。
そんなに松美さんのこと悪く言うつもりなかったんだけどね…」


田中絵梨子は、その後しばらく言い訳をしていた。そこまで優等生と思われたいか。

「それでね、その…松美さんと佐々木君って、付き合ってるの?」


教室には他の生徒が山ほどいる。

これは、言ってしまっていいのか。

俺も松美さんも、変人だと思われるかもしれない。

いや、十分思われているか。


「いや、全然」


「そうなんだ〜」


一瞬驚いた顔をしたが、
すぐに表情を戻した。

「なんだ、じゃあ付き合ってもないのに…」

「だからそれは、俺が勝手に」


「でも松美さんだって断ればいいじゃない」


そんなこと俺に言われてもな

「とにかく、俺たちは何でもないから」

俺はまた顔を伏せた。

「じゃあ、土井先輩は?」

何だ?

「あの先輩とも仲良いよね。
どういう関係?」

俺は顔を上げた。

「…なんでもない。お世話になってる先輩。」

俺だって聞きたい。

俺たちなんのために一緒にいるんだ?

「そう。だったらいいかな。
これ、いらないからあげる〜。」

封筒を置いていった。

怪しい

「…これ…」

土井と誰か、男子生徒のキス写真。

道端で堂々と。

俺も、こんな風に見えていたのだろうか。

悲しくなかった。

土井という女がどんな人間かは知っていたし、俺だってあの人に深入りしたつもりも、されたつもりもない。

そして、俺も松美彼方と、同じようなことをしている。

でも、この写真を見た瞬間、
寂しくなった。

悲しくない。
嬉しくもない。

寂しい。