自転車置き場に着くと、


「木下さん!!」


後ろを振り返るとベランダから、手を振る原田さんがいた。


罪だよ!
あの笑顔…。


小さく会釈なんかして、
動揺を隠した。


「頑張ってね!」


昨日の帰り道、受験勉強で一人暮らしを始めた話を、原田さんにしていた俺。


「ありがとうございます。」


そう言って、この場から、逃げるように自転車に跨がって、思いきりペダルを踏んだ。


近くにいるのに…。


苦しいんだよ。


どうすればいーんだよ?


ちきしょう!


胸が張り裂けそうで…。


先が見えないんだ。


『多分…かんちゃん』


答えになってねぇよ。


『多分』
なんて、納得いくかよ。