『木下さんへ 今日はありがとう!

よかったら食べてね☆原田』


タッパーが、まだ少しだけ温かさを残していた。


中を開けると、煮物とポテトサラダが入っていた。


マジで?!


お礼なんていらないのに。

こんな小さいキッチンで、煮物作るの大変じゃん!


律儀に割り箸付きだし。


俺は…。


やっぱり…。


不思議なんだ…。


謎なんだ!


テレビも机もベットもないあの、小さな部屋で。


ましてや妊婦が?


一人で生活している事。


『かんちゃん』


と呼んだ原田さん。


俺の腕を掴んだ原田さん。


強がりな原田さん。



隣りに住んでいるだけで、よかったのに…。


普通に挨拶するご近所さんで…。


そしたら


俺の気持ちも、動かなくて済んだのに……。