敦くんの好きな人の名前は、原田さん。


そして。


原田さんの旦那さんは、かんちゃんと言った。


だけれども、原田さんの口から聞いた現実は私を、苦しめた。


「居なくなっちゃった!」


「居なくなっ…?」


「天国に行っちゃった…。」


どうして?


笑えるの…?


図書館のベンチで、こないだは敦くんが隣に座っていた場所で。


空を見ながら、原田さんは言った。


もしかして?


一人で、育てる覚悟で此処に、来たの?


原田さんのお腹には、新しい命がある。


生まれたらパパは居ない。


自然と涙が頬を伝う。


原田さんが、不思議そうに私を見て、


「泣かしちゃったかな?」


ハンカチを差し出した。


――――この涙の意味は何?


同じ女性として、複雑な気持ちになった。


原田さん?


どうして、そんなに強いの?


優しいの?


泣かないの?