包丁の叩く音。

洗濯機の動く音。

変わらない朝だと感じる。

少しだけ、変わったのは。

気温が下がって暑くて起きる事がなくなった。


昼過ぎにベットから起きると早速、携帯を手に取った。


「母さん…?」


そして。


亮にシフトの交代を頼んだ。


「実家か?仕方ねぇな!麻衣は知ってんの?」


「いや?麻衣とは付き合ってねーから!」


「分かってるけど…あいつ泣かせんなよな!」


亮は全部知っていた。


麻衣の気持ちも…。


「…ったよ!分かったよ!メールしとくよ!」


そして亮は、


「お前も嘘付きだな!」


笑いながら言った。


自由で上手く世の中を生きている亮を、羨ましく思った。


小量の荷物と玄関の鍵を、握りしめて家を後にした。


原田さんの部屋を見る。


今日は今にも、降り出しそうな雨雲。


好きになった人は、ただの近所の仲。


そう言いきかせて…。


久しぶりに家に戻った。