自転車を持つ手が、じわっと汗ばむ。


なんだか
少しずつ日が短くなっている?


「ねぇ!聞いてる?」


麻衣が足早に俺の、一歩先を歩いて振り向いた。


「あぁ…聞いてるよ。」


「敦くん?」


「何だよ?」


麻衣は、自転車のカゴを持って前に進む俺を止めた。


「一目惚れなの…。」


麻衣が俺の目を離さない。


今の俺…もしかして
告られてんの?


「図書館で敦君を見た時から…好きだった。」


麻衣の顔は、日が暮れた暗い中でどう?写ってるか、見えない。


「居酒屋でまさかと…何度も思ってた。」


マジかよ

洒落になんねぇーし。


今の俺、麻衣の告白。

考えた事もなかった。


「ただ…見てた。毎日。」


「……。」


「好きみたい。敦君の事」


薄暗い空の下。



微かに見えた。麻衣の目。


それは、真剣で…。


蝉の声も、元気がなく。


夏の終わりを予告していた。