図書館の外のベンチで…。

ぼーっとしていた。


勉強するつもりが…

頭の中のスイッチが、なかなかスタートしない。


焦りもあるんだけど。


やっぱり、さっきの原田さんが頭から離れない。


ハマっちまったなー。


俺は机に迎えず、
ただ…。
自分の靴と睨めっこしていた。

「どうかした?」


ピンクのマニキュアが、太陽の光で反射した足先が見えた。


目の前に、麻衣が鞄を持って立っていた。


「別に…。」


やっぱり、来てたんだ。


「勉強しないの?」


大きなお世話だし。

でも。

麻衣は俺の横に、座ってきた。


「やる気ない時もあるわよ!」

俺…励まされてる?


昨日の亮からの言葉を思い出す。


「昨日の人、綺麗ね?」


「あぁ……」


原田さんの事を言われて、動揺した。


「でも、あの人は止めた方がいいよ…。」


はっ!
なんで、麻衣に言われる筋合いねぇよ。


でも強がる自分もいた。


「ただのご近所さんだよ。」


「ふーん。なら良かった!」


麻衣は鞄を持ち直して。


「敦くん…本当に大丈夫なの?」

「何だよ?意味わからねー」


ちょっとばかり麻衣の顔が淋しそうになった。


「顔が泣いてるから。」


そして。

勉強するからと言って、麻衣は館内に入った。


時折、俺の方を見ながら。

俺は…麻衣の勉強する姿を見ていた。


ったく…。


大きなお世話だよ。


でも…。


心の奥が少し救われたんだ。