空を翔ぶキミへ

その日は日直だったため、
帰る時間が遅くなった。

「ん...」

どこからか声が聞こえた。
公園からだ。
気になって寄ってみると、そこには
柚子がいた。
月明かりに照らされて、まるで
女神のようだった。

季節は夏に近付いているとしても、
夜は少し風が冷たい。
風邪を引いてしまうと思い、
起こすことにした。

『柚子さん!柚子さん!』

何回か名前を呼ぶと彼女はハッと
したように起き上がった。

「王子?」

柚子はビックリしたように目を見開いた。

『こんなところで何してるの?』
「別に...」
『......はぁ、送るから。』

流石にもう夜だ。
女の子を1人で帰すわけにはいかない。

俺は柚子の方へ手を差し出した。
けれど、柚子はその手を払って、
椅子から立った。

「いいよ、1人で帰れる。」

そう言って、柚子は公園を
出ていってしまった。

俺はそこで気付いたんだ。
柚子が泣いていたことに。
月明かりが柚子を照らしていた。
その頬には雫のあとが見えた...。

あの時、なぜ彼女は泣いていたのか、
俺はどうも気になった。