「ねぇ、鴻上くん」



「ん?」



「あたしは…鴻上くんに何ができるかな」



「優しいね、ワンちゃん。だからこそ嫌いになってほしかったんだけど…きっと嫌いになってくれないよね」



あたしはこくりとうなづく。


嫌いになんてならない。
あたしをからかいながら見せてくれる笑顔も大好きだし、イジワルそうにみえて、実はすごく優しいから。



「…だったら」



鴻上くんはそっとあたしの肩を引き寄せ、その腕の中に包み込んだ。


頬と頬がくっつきそうなくらい近くに鴻上くんの顔がある。


鴻上くんはあたしの耳元に唇を近づけると、小さくささやいた。



「…オレから離れないで」


鴻上くんの心に近づけたと思えた瞬間だった。