「夢がないんだもん。しょーがないじゃん」

安藤とは違って、私には夢がない。


安藤の夢はスポーツ選手のトレーナーになること。
それはずっと前から言っていた。

「好きなこととか、やりたいこととか何もねぇの?」

「ん〜……ない」

「お前……ある意味すげぇよ」

「ははっ。ありがとう」

「褒めてねーから!」


今まで大した夢を持ったことがない私にとって、進路選択とはとてもしんどいものだった。

進路希望のプリントを提出するまでに自分の人生を決めるとか私にはできない。

…とか言って、締め切りがあろうと無かろうと、どうせ私はこの先のことなんて決められない。

「まぁ、とりあえず何かしら書いて提出するよ」

「そーしな」

安藤は何かと私のことを心配してくれる。余計なお世話だと思うこともあるけど、あながち安藤の言うことは間違ってない。


いつだって、私を心配しては、解決策を出してくれた。

だけど、今回は違うみたいだ。


「まぁ、がんばれよ。二宮の人生だし、俺がどーこー言うわけにもいかねぇし」


結局は、自分で決めろと。

それが解決策だと。