「はやく古典終わんねーかな」

「あと30分もあるよ」

「だりぃ。もう一眠りするわ」

「おやすみー」


そう言って私は安藤の方へ振り返っていた体を正面に戻す。

黒板に書かれてることをノートに板書する。書くだけで内容は理解してない。

みんな、そんなもんでしょ。


カリカリと書いていると、後ろから寝息が聞こえる。


安藤、本当に寝やがった……。


安藤のスラっとした体格、ツヤのある茶色の猫っ毛。細い指や整った顔を周りの女子は「かっこいい」と騒ぐが私にはよく分からない。


一緒にいた時間がみんなより多いからだろう。イケメンだろうがブスだろうが安藤は安藤だ。


でも。今、すぐ後ろで寝ているその寝顔はどう見てもイケメンには見えない。


ヨダレ出てるし…。


私は自分のペンケースからマッキーペンを取り出し、安藤の頬に全力で
「アホ」と書いてやった。