ひよこ。

左側をちらりと見ると、

そうちゃんも物語に引き込まれていて、

ちょっと微笑ましかった。

お話自体はそこまで凝っていないのに、

すごい演技力だった。

アルネン王子とシャーラ姫だけじゃなくて、

出演者ひとりひとりが役に入り込んでいて、

すごく素敵な舞台だった…

お手伝いさん役の葵さんも、

けっこう重要な役でびっくり。

すごい。

ちゃんとしたホールを借りてるっていうのも

あるんだろうけど、すべてが本格的で。

今回は招待だったから

チケット代はかからなかったけど、

たしか通常だと1500円だったかな…?

その3倍以上の価値はあると思うんだけど…

とにかく、すごく感動した。

「…すごかったね!!面白かった〜!」

「だな!思ってたよりもずっとよかった。

正直、大学生の演技を見くびってたわ。」

そうちゃんは、そう言ってハハッと笑う。

「葵とちょっと会う約束してんだけど、

ロビーでちょっとだけ待てるか??」

「うん、もちろん。」

私たちはロビーに移動すると、

端においてあった椅子に腰掛け葵さんを待った。

「そうちゃんは、

どのシーンがよかったと思う?」

私は、劇のパンフレットを読み返してる

そうちゃんに問いかけた。

「俺は…お手伝いさんが姫を

必死で探してるとこ。」

…あ、葵さんのとこか。

「従姉妹だから、贔屓目もあるけど、

あそこの演技はかなりリアルだったな、って。」

うん、すごくわかる。

葵さん、他の人より一際上手だったと思う。

「私もそこも好きだけど、

1番は、お姫様と王子様が出会って

仲良くなってくところかな。」

「へー、なんで?」

「あのシーン、

お姫様はすごく無邪気に話してるんだけど、

王子様がたまに暗い表情を見せてたり、

考え込むようにしてて、

何気ないシーンでさりげなく

小さな伏線を張ってるんだよね…

多分だけど。」

なんかちょっと、推理みたい。

だけど、それが楽しいんだよね、舞台って。

ひとりひとりが、たくさん役作りをして、練習して…

だから、役者さんの表情もすこしも見逃せない。

「へぇ…よく見てるな。」

……………っ…

そうちゃんのふっと笑った顔に、ドキッとした。

つい、そうちゃんから目を逸らしてうつむく。

ちょっ…今のはまじで破壊力抜群だよ…

「ん?どした?」

そんなことも知らず、

そうちゃんは私の顔を覗き込んだ。

「あー…いや!!

なんでもない!!!

あっ、葵さんまだかな???

ね、そうちゃん!!!」

「???

あー、そうだな…遅いな、葵。

ちょっとスタッフの人に聞いてくるわ。」

そう言って立ち上がるそうちゃん。