樋口くんの声に振り返ると、そうちゃんがちょっと気だるげに教室に入ってきた。
「………自販。」
ぼそりと呟くように言ったそうちゃんは、元気がない。
ちらりとそうちゃんを見ると目があったけれど、ふい、と逸らされてしまった。
…どうしたんだろう…
「…っねぇ、そうちゃん。そういえば、足もう大丈夫??」
私は、できるだけ明るくそうちゃんに声をかけた。
「おー…」
でも、そうちゃんは素っ気なくそう返しただけで、足が治ったのかどうかもいまいちわからない。
…何かあったのかな…
体調悪いのかな?
それとも、ちょっと話す気分じゃないだけ?
うんうん、あるよね、そういう日。
なんて、勝手に良いように解釈して、心の中にある不安を掻き消す。
頬杖をついてぼーっと窓の外を見ているそうちゃんを、私は心配そうに見つめた。