中2になった時、ある女子と仲良くなった。

菊池 清佳(きくち さやか)という、クラスでも人気者で人望の厚いやつだった。

隣の席になったとき、いろいろ話したのがきっかけで、休み時間なんかも話すようになって。

菊池とは、音楽の趣味が一緒で、よくその話題で盛り上がった。

菊池のことが好きなのか、と聞かれることも増えて。

でも、俺には一切そんな気持ちはなかった。

ある日の1時間目、理科のビデオを見る授業が終わった。

いつも通り、休み時間になると菊池が話しかけてくれる。

「ね、奏太郎、さっきの授業で、先生寝そうになってたの気づいた?」

「は、まじかよ!気づかなかった!
うっわ…見とけばよかったぁ…」

俺がガックリと肩を落とすと、菊池がぱんっ、と背中を叩く。

「もう、口パクで教えようと思ってたのに、奏太郎ビデオに夢中で気づかないんだもん!」

「ははっ、わりわり!」

もー、奏太郎は真面目だなー、なんて言われながら談笑する。