「よし、ちょっと休憩しよっか」
駅前の少しオシャレなカフェで、向かい合って座って。
勉強を始めて1時間。
圭祐くんのその一言でシャーペンを置いた。
「俺、うまく教えられてる?」
「え?」
「いや、なんか急に不安になって」
圭祐くんはそう言って自信がなさそうに眉毛を少し下げる。
「うん、すごく分かりやすい。
いい先生」
「そっか、良かった」
ほっとしたように笑顔を浮かべる。
その表情にああ、好きだな。
なんて思ってしまうあたり、だいぶ末期かもしれない。
「圭祐くん」
「ん?」
「無理矢理勉強に付き合わせちゃってごめんなさい。
圭祐くんだって暇なわけじゃないのに…」
勉強を教えてほしかったわけじゃなく、
ただ圭祐くんと一緒に時間を過ごしたかっただけだと知ったら、圭祐くんはどんな顔をするだろう。
もちろん、そんなことは伝えないけれど、
でもそういう不純な動機があって勉強を教えてほしいとお願いした手前、後ろめたかった。