ユウが家に入ったことを確認して、

自転車を押して歩く。


ああ、くそっ。

ダメージが、でかすぎる。


のど元が熱い。


唾を飲み込んで必死にこらえる。


好きな人を思って、涙を流す。

なんて、俺は女子か。


男子高校生が泣きながら夜道を歩くなんて気持ち悪すぎる。


堪えろ、俺。

深呼吸を繰り返し、なんとか家に入る。


「おかえりー」

母さんの声。


「うん」

とだけ小さく返し、自分の部屋へ逃げ込んだ。



いつもと同じほんの少しつくったカーテンの隙間。

そこから月明かりが入ってくる。


今日は、無理だ。

絶対に無理。


ユウといつも通り窓越しに会話をして、

いつも通り笑うことなんて到底できない。


閉めよう。

あの、カーテンの隙間をなくしてしまおう。


そう思い、窓際に立つ。



…なんでだよ。

なんで、いるんだよ、ユウ。








-Side TOSHI END-