練習を終えて、電車に乗る。
飲み会帰りのサラリーマンから漂うアルコールの臭いに思わず顔をしかめる。
電車通学を始めて3ヶ月。
この臭いはどうも苦手だ。
できるだけ鼻で呼吸するのをやめようと誓い、電車の揺れに身をゆだねる。
ウトウトしかけると最寄りの駅に着くアナウンス。
タイミング悪いなぁ…
なんて思いながらあくびをかみ殺し、
電車から降りる。
改札を出たところで見慣れた背中を見つけて、駆け寄る。
「ただいま、トシ」
「お疲れ」
「トシもバイトお疲れ様」
トシは駅の近くのコンビニでバイトをしている。
バイトの上がり時間がわたしの帰る時間くらいになると
いつもこうして待っていてくれている。
でもトシは素直じゃないから。
だから、待ってた、なんて決して言わないし、
わたしもそれをわかってるから、
「待っててくれたの?」
なんて質問はしない。
これがわたしと、トシの関係。
どこにでもある、幼なじみ、という関係。