「ちゃんと、伝わってるよ。

言葉じゃなくても、伝わる方法はあるんだから」


手、出してみ?

そう言われ素直に手を差し出す。


「ユウが恥ずかしがり屋なのは分かってる。

だからなかなか言葉に出せないんだろうな、って思ってた。


でもさ、こうして手繋ぐだけでさ、なんか伝わってくるんだよ。

今、嬉しいんだろうな、とか楽しいんだろうな、とか。」


先輩の手にぎゅっと力が入る。


「だから俺、いつも手繋ぐんだよ」


ああ、もう、ほんとに。

なんでこんな人がわたしの彼氏なんだろう。


わたしにはもったいない。

もったいなさすぎる人だよ…



「なんで涙目なんだよ」


先輩にそう言われ、

自分が涙ぐんでいることに気付く。



「まあ、そのうち言ってよ!

そのときは俺が泣いちゃうかもしれないけどさ」


そう言って先輩は笑う。

それにつられ、わたしも笑ってしまう。


こんな姿、トシには見せられないな、なんてふと、思う。

どうせトシが見たら


「ユウ、気持ち悪い」


そう言うに決まってるんだから。