トシとうちの家は建て売りだったために構造が似ており、

ほぼ同じ位置に窓があった。

そしてわたしとトシの部屋は真向かいの位置にあり、

カーテンを開ければ、

勉強机に向かうトシの横顔が見える。


トシはわたしに気が付き、窓を開ける。


「どうした?」


「今日ねー、」


トシが窓を開けたことを確認して、わたしは今日あった出来事をペラペラと喋りだす。


小学生のころから気づくとそれが当たり前になっていた。


時にはノートを写させてもらうために、

トシがノートをわたしの部屋へ投げ込む、なんてこともあった。

それが親にバレて危ないでしょ!と二人で怒られたっけ。


中学になって登下校を一緒にしなくなった。

だからきっと、窓越しの会話もなくなるんだと思っていた。


でも中学に入学して3日後。

わたしは恐る恐るカーテンを開けた。


そうするとトシの部屋の窓のカーテンも少し開いていて。

それまでこっちを見ていなかったはずのトシがふっとこっちの窓を見た。


無視、されるんだと思った。

でもトシは窓を開けた。

そして

「どうした?」

そう言った。

今までと何も変わらないトシの態度に心底安心して、

いつも以上に饒舌に喋ったような気がする。




そして違う学校に通う今。


窓越しの会話だけは


今も、変わらない。