それからのわたしとトシの関係は、
今まで通りのようで今まで通りではなかった。
朝一緒に行くのは変わらなかったし、
帰りだって偶然会えば一緒に帰った。
でも、窓越しの会話をする回数が減ったんだ。
それは間違いなく、わたしに原因があった。
「もしもし」
『もしもし?家、着いた?』
「うん、もうご飯食べてお風呂も入ったよ。
ナオくんは?」
『俺もご飯食べたし、お風呂も入ったよ』
そう。
直斗先輩と電話をするようになったからだ。
毎日電話をするわけではなかったけれど。
週の半分は電話をしていた。
毎日部活で顔を合わすのに。
毎日駅まで一緒に帰るのに。
でも、電話が苦だなんて思ったことは一度もなかった。
だって、電話口から直斗先輩の声が聞こえるだけで。
直斗先輩に「ユウ」と呼んでもらえるだけで、
なぜだか、どうしようもなく幸せな気持ちになれるんだから。