しばらくの間、トシは何も言わなかった。
でもその後、聞こえてきたトシの声は
今までで1番優しい声だった。
『ユウ、お前何も悪くないだろ』
「え?」
思ってもみなかった言葉に、
思わず聞き返した。
『あかりが一方的に怒って、感情的になって、ユウに当たって。
傷ついたのはあかりじゃなくて、
ユウ、お前のほうだろ?』
トシの声が優しすぎて、
わたしのことをお見通し過ぎて、
何も返すことができない。
涙が邪魔をするのだ。
でも、泣いていることなどトシにバレたくなくて、
必死で声を押し殺す。
『謝るのはむしろこっちのほうだよ。
最近、あかりとうまくいってなかったんだ。
それであかりもイライラしてて。
ユウに会って、そのイライラをぶつけたんだ。
俺がちゃんとあかりと向き合って話をして、そのイライラを取り除いていたらユウを傷つけることなんてなかった。
ユウ、ごめんな』
違う。
きっと、そうじゃない。
トシが今言っていたことが本当だとしても、
原因がトシにだけあるわけではない。
わたしという存在が、ふたりの関係を壊したのだ。
そうじゃなければ、あかりちゃんはあんなにわたしを責めたりしないはずだ。
「わたしは大丈夫。
大丈夫だから」
あかりちゃんのことだけを考えてあげて、
と続けたかった。
でもそれを口が拒んだ。
不自然なところで終わった言葉のせいで再び沈黙が訪れる。
下で酔っ払いが騒いでいる。
わたしも能天気にあんなふうに騒げたら、
少しはこの気持ちを晴らせるだろうか。


