『なんか、懐かしいね』
ユウがふっと笑う。
『あ、でもこの距離でプリン投げても届かないか』
16歳の俺の誕生日。
いつもみたいに些細なことで言い合いになって、
その結果誕生日プレゼントのプリンをユウが自分の部屋から俺の部屋へ投げつけた。
あの頃は、それが当たり前で、
手を伸ばせば届くような距離にいたんだ。
いつから俺たちは、こんなに遠くなってしまったんだろう。
『懐かしいなー。
まだ2年半しか経ってないのに、すごく、懐かしい』
ユウは懐かしい、と繰り返す。
生まれた時から隣にいて、
それが当たり前で、
好きだと気付いたのはいつだったんだろう。
ああ、多分、中学に上がる頃だろう。
特に何かきっかけがあったわけではない。
でもある日、自分はユウが好きなんだと気付いて、
急にどう接すればいいのか分からなくなって。
それまでどれだけ冷やかされようとも登下校を共にしていたのに、
その日から一緒に行くのをやめた。
でも窓越しの会話がなくなるのは絶対にイヤで、
そこだけは変わらず少しだけカーテンを開けて、
ユウが顔を出すのを待ってたんだっけ。
次第にユウが好きな自分に慣れて、
普通に接することができるようになった。
で、高校に上がって、ユウには直斗先輩と言う彼氏ができて。
悔しさと嫉妬でおかしくなりそうな自分を必死で抑えて。
そのうちに引っ越しが決まって。
ユウには自分の口から言いたかったのに、
どうしても言えなくて、何日もユウを避けて。
とうとう引っ越しの日を迎えてしまった。
ユウは幼い子どもみたいにボロボロと泣いて、
そんな姿に可愛いな、なんてときめいて。
ユウには絶対に知られたくないけど、
あの後、車に乗り込んだ俺は親にバレないように泣いたんだ。
寂しくて、
ユウと離れることが寂しくて、たまらなかった。
そして泣きながら、決意した。
この気持ちに、
ユウが好きだというこの気持ちに封をしようと。
決意、したんだ。
「……なあ、ユウ」
-Side TOSHI END-


