「暑い」


「ほんと、毎日暑いよねー」


「なら待たせるなよ」


季節は夏。


トシの誕生日のあのゴタゴタが遥か昔のように感じる。

あんな言い争いは日常茶飯事。

だから、あの日のことを引きずることもなく

わたしたちは変わらず毎朝一緒に駅まで行って、

時々一緒に帰っていた。



「ねえ、そう言えばさ」


「なに?」


朝といえども夏の日差しは強くて。

トシはわたしのほうを向いて、眩しそうに目を細める。



「あれから、どうなったの?」


「なんの話?」


「ほら、トシの誕生日にプレゼント持ってきてくれたさ、」


「ああ、吉村ね」


あのトシに恋する女の子は吉村さん、って言うのね。



「その後、どうなの?

付き合う気、全くないの?」


あんな可愛い子そうそうトシなんかのこと好きになってくれないよ?

という一言は飲み込んだ。


だって睨まれるに決まってるんだもん。