「なんでユウが出てくるんだよ」
今度は俺が不機嫌になる番だった。
本当は不機嫌になること自体、おかしな話なんだろうけど、
でもなぜだか無性に腹が立った。
「だって……」
あかりはなぜかその先を言おうとしない。
「だって、何?
言ってくれなきゃ分からない」
あかりは俯いて、スカートを握りしめる。
追いつめていることくらい分かってる。
口調が厳しくなっていることも分かってる。
でもちゃんと言葉にしてほしかった。
じゃなきゃ、あかりが考えていること、今の俺じゃ分かってあげられない。
「だって、ユウちゃんと再会してから、俊哉ずっとおかしいもん……」
ユウと再会してから?
おかしい?
俺が?
「おかしい、って何?
おかしいのはあかりのほうだろ」
はあ、とまた溜め息が出た。
しまった、とは思ったけれど、取り戻すことなんてもうできない。
「どういうこと?
わたしの何がおかしいの?」
あかりはまだ俯いたままだ。
「あかりこそ、ユウと会ってから事あるごとにユウの名前出すだろ。
ユウがあかりになんかしたか?
なんでそんなにユウのこと気にするんだよ」
「……きだからだよ」
「え?」
あかりの声があまりに小さく、
思わず、聞き返した。
「俊哉のこと、好きだからだよ。
好きな人が幼なじみとは言え、女の子とふたりきりでいるのはやっぱり心配になるんだよ。
わたしよりも付き合いの長いユウちゃんと一緒にいたら、
取られちゃうんじゃないか、って心配になるんだよっ!!」
顔を上げたあかりの目には今にも零れ落ちそうな涙がたまっていた。
「本当はめちゃくちゃイヤだった。
でも俊哉はユウちゃんと再会して、すごく……本当にすごく、嬉しそうだったから、だからわたし、何も言えなかった。
ふたりで会ったり、ふたりでご飯行ったり……本当はしてほしくなかったんだよ」
あかりは溢れる前に服の袖で涙を拭った。
「ごめんね、わがままだよね。
でもね、それくらいわたしは俊哉が好きなんだよ」
そしてそう言ってふっと笑った。
「ごめん、今日は帰るね」
あかりの背中はどんどん遠のいていく。
追いかけなければいけないのは分かっていた。
でも、今追いかけて、
俺はあかりに何を言えばいい?
何を言っても、
もう、手遅れ……じゃないのか?


