「そんなところで何ボサッと突っ立ってんの?
あ、分かった。
オートロックなのに鍵、家の中に忘れてきちゃったんでしょ?
ドジだねー、トシ」
ユウがひとりで喋って、ひとりで笑っている。
のんきなヤツめ。
「こんな時間に何してんだよ。
あ、先輩とのデートの帰り道か」
2週間ほど前だろうか。
大学近くのカフェに入るとユウと先輩がいた。
流れであかりを含め4人でボーリングをしたんだ。
その時、感じた。
先輩はまだユウに未練があるんだろうな、って。
そのことに気づくと同時に、自分の胸のざわつきにも気づいてしまった。
そもそもその前からユウと先輩がふたりでいる姿を何度か目撃したことがあった。
ユウは自分から別れを切り出した、みたいなことを言っていたが、相手は中学の頃から憧れていた先輩だ。
コロッといってしまっていても不思議じゃない。
ユウ、単純だしな。
「何それ。
そんなんじゃないし。
バイトの帰り」
ユウは露骨に不機嫌な顔になる。
「あっそ。
より戻ったのかと思ってたわ」
「戻ってないし」
「ふーん。
その割によくふたりでいるよな」
「別にトシに関係ないじゃん」
「そうだな。
ま、ユウが誰と付き合おうと知ったこっちゃないし。
たださ、その気がないなら相手に期待させるようなことするのやめれば?
その気がないなら、の話だけど」
こんなことが言いたかったわけじゃない。
なのに、なんで。
次から次へと言葉が止まらなかった。
「なんか今日のトシ、いつもに増してウザイ。
なんでそんな言い方するの?」
ユウは吐き捨てるようにそう言って、
自分のマンションへ帰って行った。
こんなの、ただの八つ当たりだ。
自分への苛立ちをユウにぶつけてしまった。
「……はあ」
今日何度目か分からない溜め息がまた、出た。


