「そんな無謀なことして、こんなボロボロになって…」
「バカみたい」
「ほんとバカ」
ナオくんは優しく笑う。
「そんなバカなユウに提案があります」
「提案?」
「こんな時にこんなこと言うのは本意ではないんだけど」
ナオくんはそう前置きをした。
「俺じゃダメかな。
……俺と、やり直しませんか」
「ずるい」
反射的に出てしまった。
でも、ずるい。
こんな弱っているタイミングでその提案はずるい。
頼りたく、なってしまう。
「ユウと再会して、やっぱり好きだなって思ったんだ。
ずっと言おうと思ってた。
でもなかなか言い出せなくて、このタイミングに……」
ナオくんは眉を下げて困った顔をしている。
「わたし、トシが好きなんだよ?」
だからこそ、今こんなに弱っている。
今もまだ、ふたりの姿が頭の中をぐるぐるしていて苦しくてたまらない。
「うん、分かってる。
分かってるけど、でも俺はユウが好きだから」
「何それ、意味わかんない」
ふっと笑った。
いつの間にか涙は止まっていた。
そしてナオくんの腕から抜け出す。
「ありがとう。
気持ちはすごくうれしい。
でもね、同じことは繰り返さないよ」
しばらくの間、わたしたちふたりの間に沈黙が流れた。
ナオくんは俯いている。
表情が読めない。
学校帰りだろうか。
公園の横を手を繋いだ高校生のカップルが通り過ぎていく。
ふっと顔を上げたナオくん。
「どうしても?」
「うん、どうしても」
わたしは即答する。
わたしにはナオくんを利用するなんてことはできない。
それにわたしごときにナオくんがまた傷つく必要などないのだ。
ナオくんにはナオくんの幸せがある。
その時、隣にいるのはわたしなんかじゃダメだ。
もっとナオくんのことが好きで、
ナオくんもその人が好きで、
ナオくんを大切にしてくれる人じゃなきゃいけない。
「本当にありがとう、ナオくん」
ナオくんも、わたしも、笑顔だった。


