「ほんと、見てらんない」
振り払うことだってきっとできた。
でも、わたしはあえてそれをしなかった。
今は甘えさせてほしかったんだ。
ひとりで立ってられる力がなかったから。
「帰るか?って聞いたのに」
ナオくんの腕の中は心地よくて。
弱っているわたしにその温かさが沁み込んでくる。
「なんでそんなに無理するんだよ」
「試したかったの」
「ん?」
いつだって帰ろうと思えば帰れた。
でもわたしは帰らなかった。
「あのふたりの…トシとあかりちゃんの仲の良い姿を目の前で見れば、諦めがつくかなって。」
今まであえて目を背けてきた。
でも、今日はどうしてかそんな気になったんだ。
これで諦めがつけば、
わたしは楽になれる。
そう、思ったのに。
「でもね、全然ダメだった。
ふたりの姿を見れば見るほどどんどん苦しくなるだけだった」
息の仕方を忘れてしまったのかと思うほどに苦しくてたまらなかった。
ナオくんの腕の力が弱まる。
そして左頬にナオくんの手が添えられる。
「バカだな、ユウは」
そうして優しく涙が拭われる。
「そんなの無理に決まってるだろ」
言葉は厳しいのに、
ナオくんの瞳は優しくて。
涙が止まらなくなる。


