「ユウ、ちゃん。
……って呼んでもいい?」
ボーリング場でトシとナオくんが受付をしている時だった。
ぼーっと特に意味もなく自販機を眺めていたわたしの隣にあかりちゃんがやって来た。
「うん。
あかりちゃん、って呼んでもいい?」
「うん」
わたしたちがこうしてふたりで話すのは初めてだ。
意図的にわたしが避けていたから。
…いや、たぶん違う。
あかりちゃんもわたしを避けていたと思う。
「トシと付き合ってどれくらい?」
「うーん、たぶん4か月くらいかな」
そう言ってあかりちゃんは照れ臭そうに、でもすごく嬉しそうに笑った。
ああ、わたしはこんなふうに可愛く笑えない。
「そっか。
トシはどう?優しい?」
わたしは何を聞いているのだろう。
でも気づくとそう口に出していた。
「うん、ものすごく優しいよ。
優しすぎて怖いくらい」
優しすぎて怖い……か。
全然想像できないや。
「そっかそっか。
それは、うん、良かった」
わたしはうんうん、と何度も頷きながら笑った。
何がどう、良いというのだろう。
「わたしね、ずっとユウちゃんと話してみたかったんだ」
「どうして?」
「俊哉の小さい頃の話、聞いてみたいなーって」
「いつでもなんでも聞いて。
あ、でもわたしから話聞いたらトシのことキライになっちゃうかもよ。
しょうもない話ばっかりだから」
いっそのこと、トシのイヤな話をたくさんして、あかりちゃんから嫌われるように仕向けようか。
そんな悪い考えがふっと湧いて、すぐに消えた。
だってあかりちゃんがこんなことを言うから。
「どんな話でもキライになったりしないよ。
俊哉のこと、もっと知りたいんだ」
あかりちゃんは頬を染めて笑っている。
ねえ、トシ。
知ってる?
あんたこんなにあかりちゃんに愛されてるんだよ?
この幸せ者め!
なんて毒づいてみたのは、
この胸のズキズキを少しでも和らげるためだ。
……ま、全然効果はなかったんだけどね。


