「あ、お疲れさまー」

「ごめん、ちょっと講義が長引いて」


今日はナオくんがこっちのキャンパスに来ている日だった。

お昼に大学近くのカフェでご飯を食べようと約束していたのだ。


「全部おいしそうだなー

何にしよう……」


「この間、オムライス食べてただろ?」


「うん、だから今日はハンバーグにしようかなーって。

でもやっぱりオムライスもおいしそう……」


「なんだそれ。

ま、好きなだけ悩めばいいよ」

「うん、すぐ決めるー」


と、思っていると


「あ」

「ん?」

ナオくんの声に顔を上げると


「うわ、お久しぶりです、先輩」

そこにはトシと、あかりちゃんがいた。


「隣、いいですか?」

「え!?なんで!?」

思わず声をあげた。


「なんで、ってここしか空いてないし」


うそだ。

さっきまで何個か空席があったはずだ。


それなのに……

「……なんで」

店内を見渡すと確かにわたしたちの隣以外、空いていなかった。

いつの間に満席に……


「なに?なんか文句でも?」

「別に」

トシたちから顔を背けて、再びメニューと向き合う。


そして気づく。


「……ナオくん」

「ん?」

「そんな顔しないで。

わたし、普通。いたっていつも通りだから」

ナオくんがわたしを心配そうに見ていた。

何も心配することなどない。


ただ隣にいるだけだ。

トシと、あかりちゃんが。