「別れようって言われた時、どうして?って聞いたけどさ、本当は分かってたんだ。


ああ、ユウは気づいちゃったんだな、って。

自分が好きなのはアイツで、俺のことは好きじゃなくて憧れだったんだ、ってことに気が付いたんだ、って分かった。


それでも、ユウを離したくなかった。

俺は付き合い始める頃よりずっとユウのことが好きになってたから、だから絶対にその手を離したくなかった。

カッコ悪いとは思いながらもどうにか別れずにやり過ごす方法は、って思ったけど、でもユウは頑固なところがあるから、俺がどんな提案をしてもきっと考えは変わらないだろうな、って思った。

だから最後はユウの言うことを受け入れたんだ」


高校生の頃の知らなかった話を全て聞き終えて思うことは、

本当にわたしは愚かだった、ということだ。


付き合う前から何もかもお見通しだったナオくん。

何もかもお見通しだったナオくんをわたしは傷つけながら付き合っていたのだ。

自分はナオくんが好きなんだと思い込んで。


愚かだ。

それ以外自分を表す言葉をわたしは知らない。


「ユウ、そんな顔しないでほしい」


「え?」


「俺はね、ユウと付き合っていたあの時間を後悔したことなんてないよ。

ましてやイヤな思い出だとも思ってない。


本当に俺の中では夢のような時間だったんだ。

ものすごく温かくて、楽しい時間だった。


だから、俺はユウを責めないし、

ユウは申し訳ないなんて思わなくていい。

そんなふうに思われたら、俺、余計に惨めになっちゃうだろ?」


眉を下げて笑うナオくんはやっぱり、めちゃくちゃにいい男だ。


こんな人を愛せて、

こんな人に愛されたら、

どれだけ幸せだろう。


頭ではそう分かっているのに

どうしてわたしが好きなのはトシなんだろう。