「おう」
「おう、じゃない!
何、あの身勝手な文面は!」
「そう言いながら来るもんな、ユウは。」
「…うるさいっ!」
目の前にはジャージを着たトシ。
辺りには食欲をそそる、牛丼のいい匂いが漂っている。
ホームシックに陥っていたわたしのもとに届いたメッセージ。
『牛丼食いに行くぞ』
という、行かない?という疑問形で来るのが普通なはずの文章を命令形で送ってきたトシ。
はあ?!と思う反面、
身体は素直で。
牛丼、という言葉に反応してお腹がぐーっと鳴った。
そしてホームシックに陥っていたわたしはひとりでご飯を食べる気にもなれず、気付くと家から1番近い牛丼屋さんの前にいた。
「なんで牛丼?
ってか彼女と来れば良くない?」
そう言うとトシは眉間にシワを寄せる。
「相変わらずうるさいな。」
誰のせいだと思ってんのよ!と怒鳴りたい気持ちをグッと堪える。
何せ、ここは牛丼屋さんの前という公共の場だ。
「牛丼なのは、単純にその気分だったから。
で、あかりじゃなくてユウなのは、あかりをこんなところに連れて行けないし、」
こんなところ、って全国の牛丼屋さんに今すぐ謝罪しなさい、トシ。
そしてわたしならこんなところである牛丼屋さんに連れてこれる、ってどういう意味?
「それにユウ、腹減ってただろ?」
ニヤッとトシが笑った瞬間にわたしのおなかは盛大に鳴った。
「ユウは素直じゃないけど、身体は素直だな。」
トシは笑いながら牛丼屋さんの扉を開ける。
くそぉ!!
悔しいっ!!