ナオくんは静かに視線を落とす。
ああ、もう。
本当にわたしは最低だ。
こんなわたしを好きだと言ってくれている人を傷つけている。
胸が、痛い。
「ごめんね、ナオくん。
ナオくんのことは好きだけど、好きじゃなかった。」
最低で、ひどいことを言っている自覚はある。
でも、どうか分かってほしい。
人を傷つける痛みもあるということを。
「ユウ、俺は別れたくなんてないよ」
「どうして?
わたしはナオくんのこと好きじゃないんだよ?」
「それでもいい。
俺はそれでもいいからユウと一緒にいたい。」
「辛い思いをさせるだけだよ」
「それでもいい。
ずっと待ってるから。
憧れが好きに変わる日を。」
視線を落としていたナオくんは、
1歩わたしと距離を詰めて、真っ直ぐにわたしを見る。
そして両肩をぐっと掴む。
その胸に飛び込んだら、どれだけ楽だろう。
そんな甘い考えが頭をかすめた。
でも、そんなことはできない。
そんな資格はわたしにはない。
目の淵に溜まった今にも溢れ出しそうな涙を懸命に堪える彼氏だった人をわたしは見つめ返す。
「ごめんね、ナオくん」
それが、わたしの出した答え。