あの日…現国の授業で夏目漱石の話を聞いたあの日。


…トシを好きだと気づいたあの日。




わたしは部活後にナオくんに別れを告げた。



当然だ。

ナオくんみたいな優しくてカッコイイ人をわたしはずっと裏切っていたんだから。



「どうして?

俺、なんかした?」


当然の疑問だ。



「ううん、ナオくんは何も悪くない。」


本当に、何も悪いところなんてなかった。

いつだって優しくて。

わたしを大切に扱ってくれていた。

不満なんて1つもない。



「じゃあ、なんで」



「わたし自身でも気づいてなかったんだけどね、

でもね、ずっとわたしは自分に言い聞かせてたんだと思う。」


そこで言葉を切った。

勇気が必要だったから。


こんなにも優しい人をわたしは今から傷つける。



「ナオくんのこと、男の人として好きなんだ、って言い聞かせてた。

でもね、本当は違ったの。


わたしがナオくんに対して思うこの気持ちは、

憧れ…なんだと思う。」