もう…人多いっ!!


右手で握りしめていたスマホの時間を確認する。


ああ、もう。

早くしないと食堂の席が…


そう思いながら前へ前へと進もうとするが、

廊下を埋め尽くすほどに人がいるせいで思い通りになかなか進めない。



高校生の頃の食堂の列なんて可愛いものだったな、と3か月前を懐かしむ。


3か月前、わたしは高校を卒業した。

そして上京し、一人暮らしを始めた。


都会暮らしに憧れなんてなかった。

でも、あの家に住むのは辛すぎるから。


イヤでも思い出してしまう。

トシと過ごした16年という長すぎる月日を。


だからあえて都会の大学に進学することを決めた。

たくさんの人と出会って、

いろんなことを経験して。

あの16年をなんとも思わなくなるほど密度の濃い時間を過ごしてやろうと決意した。



でも。

わたしの選んだ大学はあまりに人が多すぎた。

文系から理系まで様々な学部が混在する、いわゆるマンモス大学。


都会育ちではないわたしは、入学式で人酔いをした。

そしてその人の量に3か月経った今もまだ慣れていない。