「トシくんに連絡したら?」


やっと涙が収まって、落ち着きを取り戻したわたしに美帆はそう言った。

わたしは大きく首を横に振る。


「わたしにそんな権利ないよ」


「権利?」


「好きなのか憧れなのかも分からないまま、付き合って、

初めての彼氏で浮かれて、好きなんだって思い込んで、

それなのにトシが遠くに行って、

そこで初めてトシのことが好きなんだって気づいて、

だからトシに連絡して、ごめん。ずっと好きだった。

なんて言えない。

そんなの都合よすぎる。」


「意味、分かんない」


口ではそう返す美帆だけど、

でも顔はそう言うと思ってた、ってそう言っているようで。


わたしのその考え方があってるのか間違ってるのかは分からない。


でも好きだって気づいたからって、

トシに好きだって言う権利はわたしにはないよ。


もっと反省して後悔しなきゃならないことがたくさんある。



「あー、もう、イヤだ。

わたし、めちゃくちゃトシのことが好きだったー!」


美帆にガバっと抱きついた。

美帆は何も言わずわたしを受け止めてくれる。


ねえ、トシ。

いつかまた会えるかな。


その時は必ず伝えるから。

めちゃくちゃ好きだったこと伝えるから。


だからまた会おうね。



…ねえ、トシ。

だから許してほしい。

心の中でこう思い続けることをどうか、許してほしい。




わたしはトシが、


大好きだよ。