勢いよく閉めたカーテンの端を掴んだまま、わたしはしゃがみ込んだ。


ああ、もう。

いい加減慣れなきゃ。

そう思うのに。


それなのに、

そう思うほどに涙が溢れる。



わたしはトシがいなくなる前と同じように平気な顔をして日常を過ごしているけど。

本当は、平気なふりをしているだけで。


なんならこの状況をうまく伝える自信がないわたしはナオくんにトシが引っ越したことを話せないままでいる。


でも、人には適応力というものがあって。

少しずつわたしはトシのいない日常に慣れ始めていることも間違いなくて。


だから部活中やナオくんと一緒にいる時にトシのことを考える時間はだいぶ減っていた。


でも、こうして家に帰ってくるとイヤでもトシの存在がそこに見えてしまう。

そうすると胸の奥がぎゅっと苦しくなって。

勝手に涙が溢れてくる。


こうなってから初めてわたしは気づいたんだ。

わたしはトシに依存していた。



「連絡すればいいだけの話じゃないの?」


今の状況を美帆に話すとそう簡単に言い放たれた。


でもね、美帆。

そんな簡単な話じゃないんだよ。


だって、あの日、あの時、言われたから。



『もう疲れたよ、ユウのおもりは』

って。


そして悲しげに困った顔で、こうも言った。


『俺を開放して』

って。