「…うん、また。

お邪魔しました。」


突然、うちの玄関のドアが開いて、そんな声が聞こえてきた。



「トシ、そろそろ行こっか。」

トシのお母さんとお父さんがうちから出てきて、わたしたちの姿を捉える。


「ごめんね、ユウちゃん。

トシが自分で言うから黙っててくれ、って言うから…」


泣きすぎて声が出ない。

だからとりあえず首を横に振る。



「じゃあ、ユウちゃん。

またね」


「…はい」


涙を拭って。

おばさんに手を振った。


おばさんとおじさんが車に乗り込んで。

エンジンがかかる。


それはわたしたちの別れを告げる合図。



「ユウ」


涙は拭っても拭っても流れ続ける。



「元気でな」


涙で霞む視界の中でトシは今まで1番優しい顔で笑っていた。


わたしも笑わなきゃ、そう思ったけど。

でも、笑えない。



「いい加減泣き止めよ、泣き虫ユウ」


うるさい、そう言い返したいのに、声が出ない。



「じゃあな」


車に乗り込もうとするトシ。

トシ。

トシ。


「…トシっ!!」


良かった。

やっと、声を出せた。



「ばいばい」


「うん」


バタンと車のドアが閉まる。

そうするとゆっくりと車は動き出して。


あっという間に見えなくなる。




そのあと、ただその場に立ち尽くすわたしを

お母さんが肩を優しく抱いて部屋まで連れて行ってくれる。



そうして、目を開けると


「…………眩しい…」


朝を迎えていた。