だって、トシと話すあの子の顔は、
恋する乙女の顔だった。
それに好きじゃなきゃ、わざわざ届けに来たりしない。
トシはいったい彼女のことをどう思っているのだろう。
もしかして、もうすでに付き合ってる、とか?
だとしたら、納得できることがある。
それはトシの顔だ。
わたしの知らないトシの顔。
いつもぶっきらぼうで、笑うより眉間にシワを寄せてることのほうが多いトシ。
なのにあのとき、トシはものすごく優しい顔をしていた。
わたしには見せたことのないような顔。
もし、付き合っているのだとしたら。
トシは好きな子に対して、
彼女に対して、
ああいう顔を見せるのだろうか。
だけど、どうしてトシは教えてくれないんだろう。
本当に彼女なんだとしたら、わたしに一言あってもいいんじゃないの?
だって16年の付き合いだよ?
16年も幼なじみやってるんだよ?
なのに
「彼女、できたんだ」
の一言も言ってくれないの?
それって薄情すぎない?
あーっ!
だんだん腹立ってきた!
トシにこんなにモヤモヤさせられていることにも腹が立つし、
報告がないことにも腹が立つ!
あ、そうか。
直接、トシに聞けばいいのか。
なーんだ。
簡単な話じゃない。
わたしは閉めていたカーテンを勢いよく開けた。


