「ねえ、トシ、来た?」


いつもの時間より5分過ぎても、インターフォンが鳴らなかった。

だからわたしはお母さんに聞いた。



「ううん、来てないわよ。

たまにはあんたが呼びに行ったら?」


それもそうか。


「行ってきまーす」

鞄を持って、自転車を引っ張り出す。

そしてトシの家のインターフォンを押す。


トシ、寝坊かな。

今まで連絡もなく迎えに来なかったことなんて1度もないのに。



「あ、おばさん。

おはようございます」


ガチャッとドアが開いて出てきたのはトシではなく、トシのお母さんだった。



「おはよう、ユウちゃん。

ごめんね、トシ、インフルエンザになっちゃって。

だからしばらく休むわね。」


「そう…なんですか。

トシにお大事に、って伝えといてください。」


「うん、分かった。

いってらっしゃい」


「いってきます」


そう答えて、自転車を漕ぎだしたものの。

頭の中は疑問が埋め尽くす。


トシは今まで1度もインフルエンザになったことがない。

そのトシがこのタイミングでインフル?

うーん、まあ、トシも普通の人間だった、ってことか…


にしても連絡くらいしてくれてもいいのに。


相変わらず勝手なやつだ。