トシはお葬式に来てくれた。


いつも着崩している制服をちゃんと着て、

おばあちゃんの遺影を真っ直ぐに見つめて。


他の人よりもほんの少し、手を合わせる時間が長かったような気がする。


トシはおばあちゃんとどんな話をしたんだろう。


そうして、わたしが座る親族の席のほうへ向いて、ゆっくりとお辞儀をして。

顔を上げた時、一瞬わたしと目が合って、ふっと表情を柔らかくした。



トシを追いかけようか一瞬迷った。

あの日のトシの表情と言葉がずっと胸の奥で引っかかっていたから。


でもわたしは追いかけなかった。


いつだって聞ける。

窓を開けるか、次に学校へ行く時か、

わざわざ追いかけなくたって聞くチャンスはいっぱいある。


そう、思ったから。




でも、今思う。

あのとき追いかけていたら、

何かが変わっていたかもしれない。