病院を背にして歩き始める。



ばあちゃん。

俺、ばあちゃんの言葉を信じたい。

いつきっと、ユウは気づいてくれる。

だから俺、待つから。


今にも降り出しそうな厚く重い雲が広がっている。

今夜あたり初雪が降るだろうか。



ばあちゃんに最後に言われた言葉を思い出す。


『トシくん。

ユウちゃんのこと、お願いね。

ばあちゃんはずっと、二人のことを見守ってるからね。』


ばあちゃんはそう言って優しく笑った。



いつか必ず、

必ずばあちゃんの夢を叶えてみせるから。


だからその日まで、生きていてほしい。


二人でばあちゃんのところに行って、

俺たち結婚します、ってそう伝えて。

そしてばあちゃんはあの優しい顔で

「おめでとう」

って目尻にたくさんのシワを寄せて笑うんだ。


なあ、ばあちゃん。

ユウのために、

俺のために、

どうか生きることを最期のその時まで諦めないでいてほしい。


1日でも、1分でも、1秒でも、

長く、長く、生きてくれ、ばあちゃん。










-Side TOSHI END-