「わたし、きれい?」


そう言いながらマスクを取る。



「きゃーっ!!!」


初めは乗り気じゃなかったものの、

何度か繰り返すうちに悲鳴をあげられることが快感になってきつつある。


慣れって怖い。


クラスのみんなにも口裂け女のクオリティが1番だね、

と褒められた(?)


そうして口裂け女になりきって1時間が経った頃。


きゃーっと甲高い叫び声が聞こえてきた。

さっきから聞こえてくる叫び声は女の子ひとり分。


1時間もやっていれば気付く。

女の子ひとりでお化け屋敷に入ってくるわけもなく、

ひとり分の叫び声しか聞こえないということは次に来るお客さんはカップルだ。


わたしはカーテンの後ろに隠れ、

カーテンの下から足を確認する。


ほら、やっぱりカップルだ。


スッとカーテンの後ろから出て、二人に近づく。


相当女の子が怖がっているのがわかる。

だってかなり彼氏に密着してるんだもん。


怖がりな彼女の肩を叩く。


「……ひゃあっ!!!」

なかなか素晴らしい反応。



「わたし…キレイ?」

彼女はわたしを見て怯えた顔をする。


あれ…なんか、見たことある気が…

そう思いながら


「わたし、キレイ?」

もう1度聞き、マスクを取った。


そしてゆっくり彼氏のほうにも目を向ける。



なんで。

なんで。



なんで。





「………トシ」