ユウの手首を掴み、

まだ逃げようとするユウを無理やり引き留める。



「なんで」


なんで、そう聞きたいのは俺のほうだよ、ユウ。


なんで逃げようとするんだ。


なんで…泣きそうになってるんだよ。



「さっきのは、」


誤解を早く解かなければ、そう思った。

なのに


「違う」


ユウは俺の言葉を遮る。



「なんでわたし、トシに…「あれ、ユウ?」

俺は静かにユウの手首を掴んでいた手を離した。


タイミング、悪すぎんだろ…


「おっ!久しぶりだな、坂本」


「お久しぶりです、先輩」


俺は笑顔を張り付け、顔を上げた。


「ってかユウ、その顔なんだよー!」

直斗先輩はユウの顔を見て笑う。


「やめてよー、恥ずかしいっ!!」

ユウはそう言いながら俺に背を向け、くしゃくしゃに握っていたマスクをつける。

そしてそのまま直斗先輩のほうへ行ってしまう。


「今ちょうど、ユウのクラスのところ行こうと思ってたんだよ」


「そうなの?

じゃあ一緒に行こう」


「そうだな」


二人の手が自然と重なる。


「じゃ、またな坂本」


ユウは振り返らない。



なんだ…これ…

なに…してんだ、俺…


ユウ、なんであんな顔をしたんだ。

直斗先輩と繋がれたその手を無理矢理にでも解いて、

そう、問いたかった。


でもそんなことできるわけもなく、

俺は二人の姿が見えなくなるまでただ黙って見送った。







-Side TOSHI END-