「ユウ…っ!!」


なんで。

俺は吉村の手を振りほどき、

走り出したユウの後を追った。


なんでなんだ、ユウ。


なんで、あんな悲しい声で俺の名前を呼んだんだ。


なんで、逃げ出すんだ。


「ユウっ!!!」


教室を出ると廊下には人が溢れており、

ユウは器用にその人ごみの間を縫ってどんどん先へ行ってしまう。


こんなはずじゃなかった、

なんていうのはズルいだろうか。


でも、こんなはずじゃなかったんだ。


俺の想定じゃ、

今日家に帰ってまたいつもみたいに窓越しに会話をして。


そのときにユウは少し不機嫌で。

どうしたんだよ、そう聞くと


「吉村さんと、ずいぶん仲良さそうでしたね!」

とかなんとか言われて、ちょっとだけ睨まれるんだ。


それで俺は


「たまたま会って、無理やり連れていかれたんだ」

なんて言い訳して。

でもユウは全然信じてくれなくて。

いつもみたいに言い合いになって。

ユウのお母さんにあなたたち、何時だと思ってんの!って怒られて。


窓とカーテンを閉めたあと、

俺はひとりでちょっとだけ笑うんだ。


やっぱり、ヤキモチ妬いてくれた。

って。



それなのに。

なんで。





「………ユウ」