「さて、と」
今からどうしようか。
ユウたちのクラスのお化け屋敷でも見に行くか。
でもなー、
ひとりでお化け屋敷っていくらなんでも寂しすぎないか?
あ、そうだ。
スマホを取り出し、電話帳からひとりの名前を呼び出す。
耳にスマホをあてると聞こえるコール音。
相手はユウと同じ学校に通う中学の友達。
1コール…
2コール……
……………
10コール…
まじか。
電話でねーし。
いや、でも仕方ないか。
これだけうるさければ電話なんて気にしてない限り気づかないか。
遠くから聞こえてくるバンドの演奏音。
出店の呼び込み。
BGM。
THE 学祭
って感じだな。
なんてひとりで思ってふっと心の中で笑う。
よし、とりあえずもう少しふらふらしてみよう。
それで偶然にもアイツに会えれば一緒にユウのクラスへ行こう。
見つからなかったら帰ろうと決めて立ち上がった。
「…坂本くんっ」
女の子の声で名前を呼ばれた気がした。
振り返ってみる。
でも人がいすぎて誰が俺を呼んだのか分からない。
なんだ、気のせいか。
「…やっぱり、坂本くんだった」
後ろからはっきりと聞こえたその声に
俺は振り返らずに誰だか分かってしまった。
正直、会いたくなかった。
しかも、こんなところで。
「おう…吉村」


