「トシのドヤ顔がムカついたから。
トシが悪い。」
「はあ?意味わかんねーよ!」
「トシに意味なんて分かんなくて結構です!」
「お前なあ…」
「あの、イチャついてるところ悪いんですが」
窓越しにいつも行われる口喧嘩を繰り広げていると、
あきれ顔の美帆がすぐそばにいて。
「「イチャついてなんか…」」
「ああ、そういうのもいいから」
と、手で制される。
恐るべし、美帆。
「そろそろ時間だし、行くよ、ユウ」
「え、もうそんな時間?」
時間を確認すると交代の10分前。
「じゃ、またね、トシくん」
あ、また何か交信してる…
数秒トシと視線を合わせた美帆は今度は圭祐くんと向き合う。
「また、あとで。」
「うん、頑張ってね」
美帆は今度は圭祐くんと意味ありげに見つめあう。
美帆は視線だけで会話をするのが得意だなあ、
なんて関心する。
「よし、行こう、ユウ」
「うん」
美帆が少し離れたことを確認したわたしは、圭祐くんと一歩距離を縮める。
ん?という顔で圭祐くんはわたしのために少しだけかがんでくれる。
ああ、こういう優しさに美帆はやられちゃったのかな。
「美帆のこと、よろしくお願いします」
少し頭を下げ、顔を上げると
「うん」
そう頷いて圭祐くんは笑った。
圭祐くんがいい人で、本当に良かった。


