そのあと、わたしと美帆のお化け役交代の時間まで4人でいろんなところを回った。
グラウンドに設けられたステージでバンドを見たり、
出店の焼きそばを食べたり。
圭祐くんは本当にいい人で。
わたしたちと年齢は3つしか違わないはずなのに、ものすごく落ち着いていて大人で。
美帆が自分がこどもに思えてならない、
と不安がっていった気持ちが少しだけ分かった。
でも、2人はどこからどう見てもお似合いで。
まだ付き合っていないのが不思議なくらい、お互いがお互いを思っているのが伝わってきた。
そんな姿を見ていると、
わたしと直斗先輩は周りからどんなふうに見えているんだろう、
とそんなことが少し頭をよぎった。
「美帆ちゃん、楽しそうだな」
出店のたこ焼き屋さんの列に並ぶ美帆と圭祐くんの姿を少し離れたところで見ていると、トシがボソッと呟く。
「うん、ほんとに。
わたしといる時とは違う顔してる。
なんか、ちょっとだけ寂しい」
ほんのり頬を赤く染めたまま笑う美帆の笑顔が圭祐くんに向く度に、
美帆がわたしからどんどん離れて行ってしまうような、そんな感覚にとらわれる。
「美帆ちゃんのあの顔が、好きな人にだけ向く顔なんだよ。
ユウは友達だから。
だからユウといる時と違う顔なのは当たり前だと思う。
でも、きっと圭祐くんの知らない美帆ちゃんの顔をユウは知ってる。
ユウと話してる時の美帆ちゃんの顔もすごく楽しそうだな、って俺は思うよ」
なんだかトシにムカついた。
わたしが今、何を言ってほしいのか、どう思ってるのか、
すべて俺にはわかってるよ、みたいな感じなのが、どうしようもなくムカついて。
「…いってぇー!なんでそうなるんだよ!」
だから、思いっきりトシの背中を叩いた。


