少年は躊躇うことなく答える。


「ーーああ。噂の竜はオレだ」


噂の竜だと騒がれるのも、もう慣れた。


しかし少女からは嫌味が一つも見えてこない。今までいなかったタイプに――ほんの少しだけ、興味が湧く。


「……あなたも知っていると思いますが。噂の妖精は、わたしのことです」


噂の妖精ーー確か、詩えない妖精。


少年は同じなのだと思った。今までどこにも行けなくて、居場所はなくて、それでもーー隣に誰かがいてほしいと望むのは。


白銀が再び空からひらひらと舞い落ちていく。