カタカタとマネキンの動く音が背後から響く。
目を見開いたあざみは振り向き刀李の手を強く引き、変わりに前に出る。

鋭利で太い白い腕が彼女の鳩尾を狙って、もはや避けられない位置から振りかざされている。

いくら魔術師と言えど一瞬で負う重傷は死に至る。
後ろには刀李がいて迂闊に避けられない。小刀を前に構えどうにか受けようとするがそれで防げるダメージは微々たるものだろう。


「eihwaz!」


ルーン文字を唱え防護壁を作る、だが高々即席魔術。
重傷は目に見えた現実だ。

その後に一撃でマネキンを倒せばまだ生きる道はあるはず。そう信じ、あざみを目を閉じることなく白い腕を待ち構えた。